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【事後報告】第4回ソーラーシェアリングフェスティバル(Day2)

【1日目のレポートはこちら】
➡️ 【事後報告】第4回ソーラーシェアリングフェスティバル(Day1)

農業セッション

農業セッションでは、気候変動への対応や食料・エネルギー自給率向上、耕作放棄地の解消といった課題が提示されました。現場の実践からは、農機の作業制約や日照減少に伴う土壌管理の難しさといった具体的な営農上の課題を共有。その上で、地域内での経済循環や、売電収入に依存せず営農単体で経営を自立させる重要性が示され、次世代へ農地を繋ぐ持続可能な農業のあり方が議論されました。

「気候変動が揺るがす食と農」


日本農業新聞みどりGXラボ事務局長
岡部孝典氏

日本農業新聞の岡部孝典氏は、気候変動によってすでに起きている深刻な問題について紹介しました。農作物の品質低下は今後も構造的な問題として繰り返される懸念があるとし、気候変動対策を生産者だけに押し付けるのではなく、消費者も「食を通じた当事者」として、適正な価格で買い支える社会への転換が必要だと指摘しました。


「地域を救う流域自給圏の実践」


合同会社小田原かなごてファーム代表社員
小山田大和氏

小田原かなごてファームの小山田氏からは、猛暑下ではソーラーパネルが適度な日陰となり、作物の立ち枯れを防ぐだけでなく、熱中症から農作業者の命を守るというメリットを紹介しました。

小山田氏はソーラーパネルの下、農薬や除草剤・肥料を一切使わない「自然栽培」で育てたお米を使い、”推譲”という日本酒を製造しています。他にも放棄地で獲れたみかんをジュースに加工しているなど、隣接する観光地・箱根の高級ホテル等と連携したサプライチェーンを構築しています。

最後に農水省の硬直した一律の規制強化に対し、小田原市を例にして、地域主導で推進するパッケージを作って国を動かすべきだと提言しました。


「ソーラーシェアリング拡大によるエネルギーと食料の自給率向上」


株式会社UPDATER(みんな電力)上席執行役員、日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)理事
真野秀太氏

UPDATERの真野秀太氏は、ソーラーシェアリングがもたらすマクロ・ミクロの経済効果と、企業が再エネを長期で買うことのメリットを強調しました。ソーラーシェアリングでは売電収入の7〜8割が地域で循環します。また太陽光は燃料費ゼロであることから「長期固定価格」で契約できるため、太陽光を買っていた方がコストを抑えられるという実例を紹介しました。

またこれまでは「毎年入札で一番安い電気を買う」のが企業の常識だったため、20年といった長期契約のハードルは高かったのが実情でした。ですが、現在大企業を中心に「長期固定で電力を確保することはむしろリスクヘッジだ」とマインドセットが変わり始めていると述べました。


「小さな循環農場 中嶋農園✖️木野環境」


株式会社中嶋農園代表取締役
中嶋直己氏 

中嶋農園の中嶋氏は、営農型太陽光発電の課題として、支柱への農機接触リスクや作業効率の低下、日照減少による土壌乾燥不足など現場の状況を報告しました。それでも中嶋氏は次世代へ農地を繋ぐため、自家発電の電力による将来の農機電動化という夢を掲げているだけでなく、お米・アイガモ肉・電力の3点セット販売による付加価値化を実践しています。売電収入に頼りすぎず、パネル下の農業だけで採算を合わせ、農業として自立する重要性を伝えました。


ライフスタイルセッション

本セッションは、脱炭素社会の実現や生物多様性の保全に向け、「環境意識がそれほど高くない一般の消費者に、いかにして行動変容を促すか」を模索することを目的に開催されました。「環境に良いもの=価格が高い、義務感が伴う」という従来の壁を乗り越え、日々の買い物や暮らしの中で、消費者が無理なく、かつ主体的に持続可能な選択へシフトするためのアプローチを、産官学および地域コミュニティの多様な視点から議論しました。

「ソーラーシェアリング市民農園プログラム」


宝塚すみれ発電代表取締役
井上保子氏

宝塚すみれ発電代表理事の井上氏は、長年の消費者活動の経験から、上から目線で環境意識の向上を強いるのではなく、誰もが参加しやすい仕組みづくりの重要性を訴えました。消費者が無理なく「自分ごと」として関われるリアルな体験の場こそが、高い環境意識を持たない層をも巻き込む鍵であり、ここで育まれた人と人とのつながりや小さな一歩が、未来の社会を大きく変える原動力になると主張しました。また本プログラムのメンバーである鬼澤氏と竹歳氏からも、取り組みや研究に関する発表が行われました。



生活協同組合コープこうべSDGs推進部
鬼澤康弘氏

コープこうべの鬼澤氏は、当社の子会社で運営しているソーラーシェアリングにて栽培した野菜を販売しながら、発電した電気もコープ電気として販売するという取り組みが紹介されました。コープこうべは一貫して取り組むことから、生産者の取り組みや課題をいち早く消費者に伝えることを意義として感じていると伝えました。



龍谷大学 教授(農業・資源経済学)
竹歳一紀氏

龍谷大学の竹歳氏は、ゼミ生と共に関わる宝塚すみれ発電での実践を踏まえ 、農業視点からソーラーシェアリングの紹介を検証しました 。本取組は農家の収益安定や耕作放棄の抑制に繋がる一方 、生産性低下や投資負担といった課題も指摘。その上で、多様な地域住民が関わる市民農園での体験を通じ 、食やエネルギーを「自分ごと」として捉え 、主体的なライフスタイルを選択できる社会の実現が重要であると述べました。


「未来につなぐソーラーシェアリング市民農園における協働実践活動」


近畿大学総合社会学部教授
藤田香氏

近畿大学の藤田氏は、2020年からゼミの学生と共に宝塚のソーラーシェアリング市民農園へ参加してきた活動を報告しました。本事例は食・エネルギーの自給とコミュニティ形成を同時に実践するユニークな場であり、子どもから高齢者、留学生まで多様な人が交流しています。直接体験を通じて地域や社会の課題を「自分ごと」として捉え、自ら選択し行動する人材を育むことが「未来への種蒔き」になるとの意義を訴えました。


「イラン紛争:生活を変えるチャンス!〜生活の厳しさを嘆くだけでなく、したたかに暮らしを変えよう〜」


立教大学社会デザイン研究科特任教授
河口眞理子氏

立教大学の河口氏は、有事による供給網の混乱を機に、海外に依存する日本のエネルギーや食料供給の脆弱性を指摘しました。大量のプラスチック廃棄や食料ロスといった環境負荷を見直し、物質的消費を抑えても豊かに暮らせる価値観への転換が必要だと主張しました。戦前の高いエネルギー自給率や暮らしの知恵を振り返り、「エネルギーは使う人が地域で作る」という意識を高め、便利さと環境負荷の軽減を両立する重要性を説きました。


「農産物の脱炭素化・生物多様性保全 消費者はどう評価している?ーインターネット調査から見る消費者の本音ー」


早稲田大学理工学術院 環境・エネルギー研究科教授
野津喬氏

早稲田大学の野津氏は、一般消費者約800名を対象に実施した野菜購入時の意識調査の結果を報告しました。消費者が最も重視するのは「価格」や「鮮度」であり、「生物多様性」や「脱炭素」は最下位という厳しい現実を提示しました。この結果に対し、環境配慮を単なるエコとして訴求するのではなく、将来も美味しい農産物を食べ続けるための「未来への投資」として価値を伝える必要性を説きました。


ユースセッション

ユースセッションでは、30歳以下を対象としたソーラーシェアリング普及に向けてのアイデアピッチコンテストを行いました。詳細は以下よりご確認ください。

➡️ 報告記事「U30アイデアピッチコンテストを開催しました!

アカデミックセッション

アカデミックセッションでは、ソーラーシェアリングの普及と基礎研究の進化をテーマに、国内外の最先端の実践、環境負荷低減効果、国際的な法制度やモデリングを検証し、地域社会と調和する次世代のあり方を中心に議論しました。

「山口県における地域資源を活かした営農型太陽光発電技術の開発(野菜)」


山口県農林総合技術センター農林業技術部 農業技術研究室野菜研究グループ専門研究員
原田浩介氏

原田氏は、営農型太陽光発電下での作物栽培への影響と経営評価の研究成果を報告しました。日陰を好む「畑わさび」は、50%遮光下でも収量を維持し、売電収入を含めた総所得が約1.9倍に向上すると試算。一方、玉ねぎやさつまいもは収量が減少するため遮光率の見直しが必要なことや、夏場の高温下では枝豆のように遮光がプラスに働く場合もあるとし、適切な品目選定の重要性を訴えました。


「山口県における地域資源を活かした営農型太陽光発電技術の開発」


山口県農林総合技術センター農林業技術部 花き振興センター専門研究員
藤田淳史氏

藤田氏は、35%遮光の営農型太陽光発電下における「りんどう」栽培の適応性と経営評価を報告しました。涼しい気候を好むりんどうにとって、遮光が夏の猛暑対策として有効に機能し、生育や収量が大幅に向上しました。課題である支柱による植え数の減少には、ジグザグに植える千鳥方式の密植で克服しました。売電利益と密植の相乗効果により、総所得がパネルなしの2倍以上に向上するという劇的な成果を示しました。


「ベトナムにおけるソーラーシェアリングの展開と熱帯農業への応用可能性 〜熱帯地域における食糧生産との両立を目指して〜」


九州大学熱帯農学研究センター 熱帯作物・環境部門 助教授
濱岡範光氏

九州大学の濱岡氏は、ベトナムにおけるソーラーシェアリングの展開と熱帯農業への応用可能性を報告しました。現地では持続可能な農業戦略「ビジョン2050」のもと、価値重視で気候変動に強い農業への転換が進められています。同氏は、高温や洪水など特有のリスクを抱える熱帯地域において、ソーラーシェアリングが食料生産と発電を両立させる革新的なブレイクスルーになり得ると期待を寄せました。


「ソーラーシェアリングによる農業由来温室効果ガス削減の可能性 ー水田およびサトウキビ畑の事例ー」


福島大学食農学類 准教授
渡邊芳倫氏

福島大学の渡邊氏は、ソーラーシェアリングが農地の微気象を変化させ、温室効果ガスを削減するという新たな環境価値を報告しました。同氏は、パネル設置による地温低下がメタン削減に繋がる可能性に着目し、独自のパネルを用いた有機水田の実証実験で地温が1〜3度低下、メタン減少の可能性や稲の収量維持を明らかにしました。


「韓国における太陽光所得村及び再生可能エネルギー普及戦略」


Industry-University Cooperation Professor, Department of Energy Engineering, KENTECH
イム・チョルヒュン氏

韓国エネルギー工科大学のイム氏は、少子高齢化や農家所得低下が進む農村の解決策として、農業と発電を両立させる「営農型太陽光発電」や独自の住民参加型モデル「太陽光所得村」を報告しました。これらは売電収益を外部事業者に集中させず、地域の協同組合や農業者に還元し、農村福祉に役立てるという国主導の政策です。日本を先行事例とし、官民のバランスを課題としつつ、日韓が強力なパートナーとして共に発展していく重要性を訴えました。


「エネルギー・食料・経済安全保障を支える営農型太陽光発電 ー工学的モデリングと政策評価の視点からー」


京都大学大学院 エネルギー科学研究科 エネルギー社会・環境科学専攻准教授
尾形清一氏

京都大学の尾形氏は、エネルギーKPIの観点から、各作物に適した遮光率のシミュレーションを行うシステムを開発しており、エネルギー分野において国際的に認められた査読論文を数多く執筆しています。
尾形氏は、遮光率の基準を一律に決定するのではなく、地域の日射量や作物の種類などを考慮して基準を決定することにより、農業収益を最大化できると提言しました。


クロージングセッション

「希望する未来は私たちで作る!」


株式会社TERRA代表取締役
東光弘氏

東氏は、気候変動と農業衰退の危機を同時に解決する営農型太陽光発電の巨大なポテンシャルを指摘 しました。自動設計等のDX化や、軽量で風荷重のない国産「ペロブスカイト太陽電池」の活用により、野立てより低コスト化する挑戦を報告。北海道から沖縄、海外の砂漠緑化まで各地の気象に合わせた技術開発を推進し、「分かち合い」の精神で世界の環境・農業課題に貢献する姿勢を示しました。


閉会挨拶


ソーラーシェアリング推進連盟共同代表 近藤恵氏

近藤氏は、二日間で延べ700名が参加したフェスティバルの閉会を宣言しました。オーガニックライフライフスタイルEXPOとの共同開催の意義や、将来世代にとって生きやすい社会とするために大人が背中を見せる重要性を語りました。田んぼへのパネル設置農地における望ましいソーラーシェアリングの好事例を普及させるにはさらなる努力が必要であり、今後ソーラーシェアリングが農業の「普通」になるよう尽力すると誓いました。


2日目のまとめ

2日目は、農業従事者、消費者、若者、学問など多様な視点からソーラーシェアリングを促進するための包括的な議論が展開されました。

農業セッションでは、次世代太陽電池による低コスト化や地域内での経済循環など、営農継続と地域還元の具体策を共有。ライフスタイルセッションでは、オーガニックな暮らしとの融合や次世代の新しい視点を取り込んだ道筋を作り上げる重要性が示されました。またユースセッションでは学生による様々なアイデアが提案され、アカデミックセッションでは、科学的データによるソーラーパネルの最適設計、ソーラーシェアリングの多様なメリットが提示されました。
連盟としては、今までのライフスタイルを見つめ、今後持続可能な社会の形成には何が必要なのか、多様な視点からの対話と努力を重ねて、ソーラーシェアリングを「次世代の農業技術」として普及させる未来を創出していきます。

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